2026.03.30
2025年度取り組み実績
1.事業概要
本事業は、大学生が主体となって、温室効果ガス排出削減に取り組む企画です。持続可能な社会の実現に向け、大学生の活動がCO₂ネットゼロムーブメントを起こし社会を変えていくことをサポートしています。
初年度は、フューチャー・デザインのワークショップを実施し、2050 年の社会のあり様の分析や必要な施策を考えました。2年目以降は、1年目に考えたアクションプランをもとに、実際に地球温暖化防止活動に取り組みます。
2. フューチャー・デザインとは
将来世代に持続可能な社会を引き継ぐための仕組みのデザインと実践のことです。
人は元来、近視眼的で未来について楽観的になりやすく、今ある課題への対処も現在の制約にとらわれてしまいがちです。そこでフューチャー・デザインの手法では、未だ見ぬ将来世代の視点に立ち、持続可能な社会のあり様を描き、取るべき対策を検討します。
目の前の利益や便利さにとらわれず、未来から今を見つめ直します。その発想が、社会の構造を変える一歩となります。
3.ワークショップについて
令和7年度10~12月に、3回のワークショップを実施しました。
3-1.講師と参加者
講師:大阪大学大学院工学研究科 教授 原 圭史郎 氏
オブザーバー:滋賀県立大学 環境科学部 環境政策・計画学科 講師 堀 啓子 氏
参加者:学生6名(滋賀県立大学4名、龍谷大学2名)
社会人9名(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター2名、トヨタモビリティパーツ株式会社4名、リコージャパン株式会社2名、株式会社ダイフク1名)
3-2. 第1回ワークショップ
現在視点から、2050年の滋賀県の社会状況、5年以内に検討すべき対策・施策について検討しました。
各グループにそれぞれ2つずつテーマを割り振り(表1)、ディスカッションを行ったところ、多様な意見が出ました(表2、3)。
表1.各グループのテーマ
| グループ | テーマ① | テーマ② |
| A | ライフスタイル・行動変容(消費・食料・省エネ・家・交通) | 教育・人材育成(学校や教育のあり方、環境学習、市民活動) |
| B | 産業(エネルギー、技術開発(DX)、サーキュラーエコノミー) | 気候変動への適応(防災、熱中症対策、感染症対策、水や食料不足対策) |
| C | ライフスタイル・行動変容(消費・食料・省エネ・家・交通) | 気候変動への適応(防災、熱中症対策、感染症対策、水や食料不足対策) |
表2.2050年の滋賀県の社会状況
| グループ | 意見 |
| A | 2050年の滋賀県では、極端な気候や災害の増加に直面しつつも、人々の努力や技術の進 歩によってカーボンニュートラルが達成されている。 環境教育の発展により人々の意識が向上し循環型社会・シェアリングエコノミー・オフ グリッドなどの普及が進む。 |
| B | 環境状況は現在よりも少し悪化。生き方が二極化(都市化・里山型)の生活が一般的と なっている。ロボット+AIと共生が都市インフラのベースとなっているが、人口不足に よるサービスダウンは受要している。 |
| C | 2050年の滋賀県では温暖化が進み、気候変動の影響で災害が増え、琵琶湖の渇水が増加し、自然生態系に悪影響が生じている。 若い世代を中心に、環境に対する意識が高まる。滋賀での快適な暮らしにより、寿命がのびて、日本一の長寿県となる。 農村で暮らしたいと思う若い世代が増え、テレワークをしながら農村に住む人が増える。 |
表3.5年以内に検討すべき対策・施策
| グループ | テーマ | 第1位に選ばれた対策・施策、選択理由 |
| A | ライフスタイル・行動変容 | 金銭的インセンティブを生み出す(環境配慮に対する金銭サービス) 環境に良いことを消費者が選択しやすくするため |
| 教育・人材育成 | AIでは賄えないこれから必要になるスキル(クリティカルシンキング・創造的思考力)が学べる場の提供 気候変動など対応しにくい問題を打開するため。 |
|
| B | 産業 | CO₂吸収産業への投資(税金分配のあり方) 林業や農業などCO₂を吸収する一次産業への技術・税金分配、AIなどの技術も受容しつつ、融合する形へ。 |
| 気候変動への適応 | 意識を変革する教育システムの強化(体験、フィールドワーク:社会人・子供も) 社会が変わっていくための土台なので 時間がかかるので |
|
| C | ライフスタイル・行動変容 | テレワークをするための生活インフラ整備 若い世代が長く住むために必要であるため |
| 気候変動への適応 | 品種改良などの研究強化 気候変動の影響を受けやすいから。農業をする人を増やすため。 |
3-3.第2回ワークショップ
仮想将来世代の視点から、2050年の滋賀県の社会状況、2025年当時から、5年以内に検討すべき対策・施策について検討しました。その際、未来人になるためのアイテムとして、2050年のステッカーが付いたビブスを着用しました(図3、4)。
第1回ワークショップと同様に、各グループにそれぞれ2つずつテーマを割り振り(表1)、ディスカッションを行ったところ、第1回ワークショップとは異なる意見が出ました(表4、5)。
表4. 2050年の滋賀県の社会状況
| グループ | 意見 |
| A | 2050年現在の滋賀県は、温暖化によって災害は増えたものの、その教訓として循環型社会が加速し、技術が進歩した。 AIの普及も相まって、一次産業の課題解決につながり都市集中型に限界を感じていた人々の田舎暮らしを後押しした。 また、過度なAIの普及により、人間らしさ、地球らしさを追求する価値観が広まり、多様な働き方につながった。 |
| B | 2050年の滋賀県は環境はカーボンニュートラル未達成で気温が上昇中、災害が深刻化しており、居住のあり方が分散している。休みが増え、副業もあたり前。省エネが進み、エネ需要は大きく減少しており、かつ新エネも普及し、エネ自給率はup!個人の生活が多様化し、幸せを追求することが重視されている。個人の興味に沿った教育を一生続ける。農村の機械化が進み、農作物のブランド化がされている。 社会全体で技術進歩があり、ロボットなどにより、労働の需要減少。宇宙や地下の産業が活発化している。 |
| C | 2050年現在の滋賀県は、環境状況は温暖化が進行しており、自然災害が多くなっている。暮らし面ではAIやロボットを活用し、便利な生活ができている。 多様性が認められ、自由な生き方をしている人々がたくさんいる。 都市に人口が集中していて農村部は人がおらず野生動物が増えている。 →一極集中型になっているので、農村部の管理・活用が課題となっている。 |
表5.5年以内に検討すべき対策・施策
| グループ | テーマ | 第1位に選ばれた対策・施策、選択理由 |
| A | ライフスタイル・行動変容 | 災害の被害を受ける前に産・官・学連携して循環型社会の実現のために資源投入、ビジネスモデル、政策の事前検討 起こってからでは遅いから。人々の生活がまわらなくなるから。 |
| 教育・人材育成 | 金融(義務教育~)情報リテラシー(大人も含む)教育の推進 AIのメリットの最大化、デメリットの最小化。将来への不安を取り除くことで生活の豊かさを享受できるから。 |
|
| B | 産業 | ロボット、AI等利用のルールづくり 待ったなし! |
| 気候変動への適応 | 新エネルギーの導入強化 待ったなし! |
|
| C | ライフスタイル・行動変容 | 少子化対策 2050年現在人口減少が進んでいるので、出産子育てをしやすい対策をしておかなければいけない。 |
| 気候変動への適応 | 環境活動に参加 人まかせだと前に進んでいかないので、自分ごととして、みんな考えるべき。 |
3-4.第3回ワークショップ
いずれの視点(現世代、仮想将来世代)でも良いという条件のもと、2030年までに取り組むべき施策や対策の最終提案を行いました(表6)。また、最終提案を踏まえて、次年度から1、2年を目途に取り組んでみたいアクションプランを検討しました(表7)。さらに、将来世代視点での思考特徴を分析しました(表8)。
表6.5年以内に検討すべき対策・施策(最終提案)
| グループ | テーマ | 第1位に選ばれた対策・施策、選択理由 |
| A | ライフスタイル・行動変容 | 廃棄物のリサイクル強化に向け、金銭的インセンティブを増やす(補助金・買取価格)。 循環型社会の実現のため。 |
| 教育・人材育成 | 循環型社会の実現を目指して子供が学べる機会をつくる(コンポスト体験・自然と触れ合う体験) 幼少期から環境への意識をもってもらうため。 |
|
| B | 産業 | エネルギー開発・導入・強化[社会]、[個人規模] (水素・バイオマス・eメタン・再エネ) CO₂の排出をへらすため(入口) |
| 気候変動への適応 | ・CO₂吸収産業(林業等)[社会] ・雨庭、庭の植林、コンポスト[個人規模] 出てしまったCO₂を減らすため(出口) |
|
| C | ライフスタイル・行動変容 | 多様性が認められて、自由な生き方ができる。 個々の価値観が大事。 |
| 気候変動への適応 | 個々の防災意識を高める。 異常気象が増加しているから。 |
表7. 取り組んでみたいアクションプラン
| グループ | アクションプラン |
| A | 使わなくなったもの(本や家電など)を譲る活動・場づくりを進める。 |
| 子ども達の環境教育に学生が参加する(コンポスト体験、自然と触れ合う体験、企業と一緒に出前講座) | |
| B | 体験システムの構築(実証実験)個人でも人体実験 |
| 個人に行動してもらうための活動(雨庭・プランター、農村留学…) | |
| C | ・子ども(小~大学生)が大人に向けて環境授業をする。→その後、年代を超えたグループワーク ・企業とコラボして、環境に配慮した生活グッズ作り ・防災、環境についてSNSを活用し、バズる動画をつくる。 |
| 多様性を認めるため、色々な人と接点を持つ場を作る。 例)異業種交流みたいなイメージ・多様性企業インターンシップ |
表8. 将来世代視点での思考特徴
| グループ | 意見 |
| A | ・社会構造など、広い視野で考えられる。 ・特定の社会イベント、それを踏まえての考察ができる。 →理想のゴールを見据えて考えられる。 ・現在の状況だけでなく、1周回って起こる事態に踏み込める。 ・人間に関わることについて深められる。 ・自分ごととして捉えられる。 |
| B | ちょっと過激 |
| C | ・自分ごとになった。 ・未来への希望。希望を探索していた。 ・広い世界観での思考。 ・今の条件にしばられない考え方。 |
4.参加者の声
・現代人視点:目先のこと、今の暮らしの中でできそうな意見が中心だった(コンポストの普及など)未来人視点:社会構造や教育など、中長期的な視野で、抜本的な改革に関する意見が多く出た。
・初回は現状ベース、2回目は将来ベースだったので、2回目の方がやや楽観的(=理想的)な将来像であったように感じる。しかしやはり、現状からの思考が抜け切れていなかったように思う。しかし3回目で振り返り俯瞰的にみることで、対策などについても、分野間のつながりを考慮したものに進化した点が興味深かった。
・フューチャー・デザインの考え方に基づき、他の課題や身の回りの課題についても、考え方を変えてみる視点を大事にしていきたい。また、環境問題を考える上で、人間の性質の面から研究するのも興味深いと感じた。大学で研究分野を決めていく際にそのような考え方も検討してみたい。
5.今後の取組
2/17以降、19時以降の時間帯にオンラインで学生同士の話合いを実施します(活動内容の決定に時間がかかる場合、打合せを数回実施)。フューチャー・デザインの手法を身につけた学生同士で協議し、次年度以降の活動内容を決定します。
また、次年度、学生の参加者を追加で募集予定です。また、次年度、学生の参加者を追加で募集予定です。